専務 菅野聡のブログ

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老舗書店「有隣堂」が進める大改革から自社を熟考する

10月8日夜、母からの電話で、テレビ番組「ガイアの夜明け」を見る。

取り上げられていたのは、有隣堂。神奈川県民だった自分には、なじみ深い書店。そして、現在副社長のご子息が型破りな方法で、ネット販売が主流になりつつある難しい書店経営に活路を見出そうとしている特徴ある企業。

誠品生活という台湾の書店の日本での販売権を獲得し、日本の第一号店を日本橋に出店した。社員から「書店のノウハウを持っている自分たちが、海外の書店のブランドを扱うことに対して、モチベーションの維持が難しい」との声に、「残念ながら、「有隣堂」を出店してほしいという言葉はなかった。一切。みじんもなく。これが有隣堂の現状だ。」と、社員に危機意識を伝えていたところがとても参考になった。

ある程度の地位を確立すると、ノウハウもあり、プライドもある。現状を変えたくないバイアスも働く。変えたくないと思いやすいところは、私も同じ。ある程度確立してきたかなというものを変えるのはとても負荷がかかるし、開拓する道が目的地に向かっているかは、進んでみなければ分からないから、大きな不安が付きまとう。

変わらないことは簡単。ある程度は、変わらない方が、安定できる。「変化」を求めると、それが自分たちにきちんと適合するまでは、お客様から本来の変えたい目的とは別の姿に受け止められてしまうことさえもある。でも、新しいことに挑戦をしないと、気づいたら、社会に求められていない会社になってしまう。

そんな会社の未来を、私は望んでいない。安住してよいほど、日本の補聴器市場では、必要となる人たちの声に応えきれていないのは、客観的調査結果からも明らかだから。極々小さな家族経営の小さな企業であっても、「困っている人の助けになりたい」という気持ちが一番。不安は大きくても、あるべき姿を夢みて、道を拓く。

でも、皆がその想いについてきてくれるのか…おそらく、それはなかなか難しいこと。かなりの危機感がなければ、それは難しいことだから。一時代を築いた有隣堂でも、自店での出店を全く求められていないという現状。話す副社長も、聞く社員も、とても辛いことだったと思う。

そんな中、我々は大きなオファーを得た。大いなる名誉あることと思わなければいけない。とある方からお祝いのお言葉をいただいたのは、「誰でも関わりたいプロジェクト。だからといっても、決して入れるものではないこと。オファーが入ったということは、それだけとても名誉あることですよ。」と。

いただいたそのお言葉を、素直に私は受け止めたい。これからしなければいけないことは、賛同して同じ方向を向いてくれる人を、もっと増やしていくこと。色々と模索を始めました。とても前向きな悩みです。

(記憶を基にこのブログを書いたため、番組に関する詳細表現は、少し意訳があるかもしれません。ご容赦ください。)

きこえることに、うれし涙。

本日ご来店になられたお客様は、すでに補聴器を使用されている方。新たな聴き取りのために、補聴器の新調をご希望になり、青山店にお越しいただきました。

つい最近のこと、社長と話した話題に「涙」があります。10年以上前は補聴器で聴こえるようになるだけで、涙を流す方もたくさんいらっしゃって、こちらも良い仕事をさせてもらったなと思ったものです。最近はめっきり涙を流すお客様がいらっしゃらず、時代が変わってきましたねと社長と話していました。

本日お越しの若いお客様から、「涙が出そうです…。」と一言。それはスマホの音楽を補聴器で聴けるようになったことによる感動から。難聴になることで、音楽から遠ざかってしまう人は多いですが、補聴器できちんと補正した状態で、補聴器をワイヤレスイヤホン代わりに使うことで、スマホの音楽がダイレクトに聴こえる。一見、補聴器が不要の人には当たり前に見えることが、実は難聴の方には難しいことがあります。2週間後、またお会いするので、その時も本日のような柔らかな笑顔をまた見ることが出来ればよいです。

ワイヤレス技術は以前からあったわけではあるものの、やはり認知度は低い。でもその前に、「補聴器」そのものの認知度が低すぎるのが日本の現状。これは何十年と変わらないことで、何とかしなければならない。

「使命感をもって、伝えていかなければならない。」

私達の店は非常に小さい店ですが、志は、かなり高いと自負しています。2019年の最初のブログで申し上げた「石の上に10年座り続けた東京ヒアリングケアセンターが、2019年にどうなっていくのか…」、本日その答えが一部公開されました。明日以降に、正式にご案内させていただきます。

(お客様と自分の)満足度を高めるための「三方よし」

ブログを更新しようと準備をしていたところ、公開を忘れたままの6月の下書き原稿が残っていることがわかりました。1カ月も前のことで少し記憶が曖昧ですが、文章としては、伝えたいことがまとまっており、ちょうど一カ月前の6月18日に作成したものであったこともあり、公開することにしました。型どり業者、型どり屋さん、フィッティングのプロ…フィッティングを主業務として行う者への評価は人それぞれ。このブログから、私の仕事について何らか感じていただけるものがあれば嬉しいです。

===(6月18日に、当日の出来事についてまとめたブログ)===

今日、とある仕事のことでスタッフに対して、先日読んだ雑誌に出てきた近江商人の「三方よし」について、話をしました。先週起きたJust earの耳型採取での出来事もまた、「三方よし」の考えから発生したものかなと思い、今日のブログはそのことに関するお話です。

先日ご紹介した「わたしのオト」の特集でも書かれていますが、Just earの耳型採取は他のそれとは大きく異なります。耳型採取時にセッティングする特殊なヘッドゲージを用いるJust earの耳型採取。耳型採取とは耳の型を採取するという行為が本来は基本の仕事ですが、Just ear用の耳型採取では大きなダイナミックドライバーやその他の部品を適切に耳に収めるために、特殊な器具を用いて、設計者やデザイナーの視点も併せ持ち、採取しています。「よい音のために」できるだけよいフィット感になるような採取法をベースに、さらに、大きな部品をできるだけ美しく収めるために、そして、部品が適切に組み込まれるように現実性も考慮して、コンマミリ単位又は、それ以下で、セッティングを行います。

先日のTwitterにて「120%の力を込めて耳型採取をしている」とツイートしましたが、先週は200%の力を込めて採取するケースが多々続きました。120%という言葉には、毎回全てのお客様に100%全力投球しているという意味を込めました。200%とは、100%の全力投球だけでは全く歯が立たない難しい耳だったという意味です。お一人に対して200%の集中力を注ぐのは、その字の通り「心血を注ぐ」行為で、大きな疲労を伴うもので、とてつもなく疲れました。何も考えずに採取すればすぐに採取できますが、できるだけ良いフィット感に、そして完成品が美しく、製作者にとっても作りやすく…言い換えれば今日スタッフに話した「三方よし」に通じる考えで耳型採取をしているのだなと感じました。

本日はJust earの音質調整モデル(XJE-MH1)の納品日。XJE-MH1のお客様の楽しみは、音質コンサルタント(メーカーエンジニア)に対して、完成品でも音質のリクエストをできること。私にとって興味あるところは、フィッティングの完成度を対面で確認できること。特に、装着感とともに突き詰めた中で完成した、イヤホン装着後の美しさの出来栄えを見ること。おそらく日本で、いや世界でここまで、たったイヤホンの耳型採取のために、心血を注ぐ技能者はいないだろうなと思いつつ、テキストだけでは伝わりませんが、今日納品させていただいたお客様のJust earは、とてもきれいで、苦労が報われた瞬間でした。