専務 菅野聡のブログ

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雑誌MONOQLOでのイヤホン批評について(前編:評価方法)

雑誌モノクロ10月号表紙

評論家デビュー作への意気込み…

今回、「テストするモノ批評誌 MONOQLO(モノクロ)10月号 10周年記念号」の巻頭特集ページにて、ユニバーサルイヤホンに対して批評するという初めてのお仕事をいただき、さてさて「装着感」の評価とは、どのように行うべきであろうかとなり、評価方法を検討する事前準備から始めることにしました。

一応「評論家」デビュー作となるだけに、自分で納得のいくものにしたい。そして、この批評の精度が、現在の補聴器やJust earの事業に悪い影響があってもいけません。更に、各メーカーが商品化するまでに、(おそらく)試行錯誤を相当されて出来上がっていると思うだけに、勝手気ままにフィーリングで評価するものでもない…とも考えました。

各製品に敬意をもって評価するために、多角的に「装着感」を批評し、理由ある点数付けを行うことに決めました。

良いイヤホンとは何か

良いイヤホンとは、どのようなものでしょう。イヤホンの装着感については、遮音性能をまず初めに思い浮かべましたが、使用目的は人それぞれであり、小さな音の聴き取りから重低音を望む方、外の音も入りつつBGM代わりに使いたい方まで、個人にとって「良いイヤホンの定義」は必ずしも一致しないため、そのための「装着感」も一様ではないという考えに至りました。

快適性、安定性、遮音性、イヤピースバリエーションで評価

そこで、今回は「装着感」を支える詳細評価として、「快適性」「安定性」「遮音性」の3点に絞ることにしました。そして、様々な耳の形状に合わせられる確率の評価として、「イヤーピースのバリエーション」も加え、合計4項目で評価することに決めました。

そして、補聴器とテイラーメイドイヤホンの両方のフィッティングに精通するイヤーフィッティングのプロとして、耳型採取からフィッティング調整を通して、数多くのイヤホン使用者のお耳に触れてきた経験もフル活用し、自分の耳だけではなく、様々な耳への展開を加味して批評しました。

実際の評価については、「後編」に続きます。

補聴器技術を高めさせてもらった、あなたとの出会い。そして別れ…。

一般的には、補聴器は買い替えを続けて、長いお付き合いになるのですが、その期間は短くあるべきというのが、補聴器業界のごく当たり前の常識。「どんどん買い替えを提案していかないと」と良く勧められるのですが、性格上、そういうことはできず、一度お作りさせていただいた補聴器を長く大切に使っていただきたい、そう思っています。

補聴器技能者という仕事の宿命、それはご高齢の方が、主なお客様のため、年単位でお付き合いを重ねる中で、良い関係を築けて良かったと思っていた矢先に、その方の天命が来てしまい、突然の別れを迎えるというもの。すごく、辛いです。

昨日も、突然の訃報に、肩を落としました。何となくお元気が無いように見えてはいたものの、まさかと…。

このお客様はかなり特別な方。聴力データやお耳の状態、客観的に考えれば、この一択。そういう選択肢しかないお耳でした。しかし、それを選んだ場合、その方のお仕事でその補聴器は使えないことを意味しており、総合的に考えれば、何とか別の方法を模索したいというものでした。そんな中、当店のお客様からのご紹介で来店されました。

医療機関から紹介された補聴器専門店での試聴結果や提案された補聴器は、特におかしくはありませんでした。前述の通り、客観的に考えれば、適切。でも・・・その方のお仕事を考えれば、私としては「あり得ない」選択でした。

とはいえ、他の提案を模索できるほど、選択肢のあるお耳でもなく…。

今になって思えば、良くひらめいたなと思いますが、「この手法を実現すれば、不可能を可能にできる。」ピーンと、アイデアが頭に浮かんだのですね。通常の補聴器技能者ではありえない方法を編み出して、補聴器を製作しました。かなりトリッキーな作り方になるため、ご本人に説明し製作意図へ同意いただき、メーカーの設計者にも頼み込み製作に漕ぎ着けました(一度は跳ね返された記憶がありますが…)。

どうして、あんなトリッキーな手法を思いついたのだろうと、想いを巡らせてみると、それは、私が補聴器だけでなく、テイラーメイドのイヤホンの仕事に、かなり、のめり込んでいたからだと思います。一般のお客様から、著名アーティストまで、年間最高1,000人の耳型を採取したりして、耳の特徴が嫌でも体に刻み込まれました。たった一度の結果のみが求められる言い訳が通用しない現場も経験しました。そんな経験が活かされ、「この方法を使えば、いいんじゃないか」と、後にも先にも、このお客様のために考案した技法を実施しました。

「小さい耳に小さな耳あな型補聴器を作る。」これは、かなり非現実的ですね。でも、それをこのお客様では実現できた。私の経験を総動員したからこそ、できた。そして、喜んでいただけた。一般的な医療機関を通したルートでは解決できなかった課題を、プライベートで紹介を受けて、対応できた。…痛快でした。

後にも先にも、この方だけのために行った技法により、出来上がった世界に一つの目立たない補聴器。広告宣伝で活用される「小型」や「目立たない補聴器」などが一蹴できるほどの、完成度。自分にとっては「作品」と呼んでも過言ではない出来上がりであったため、もっと使っていただきたかった…。でも天命には抗えませんね。

故人には…、どうぞ安らかに…、そして、私に技術を高める機会を与えてくださったことに感謝し、今夜のお酒は、献杯です。

Just earで全国を巡る、ジャストサイズな1カ月半【前半編その1:スタイリストさんについて語る】

「また体験記のようなブログ、今回も書くんですか?」との一声をいただきましたので、全国ツアーの前半について、まとめてみることにしました。

「ジャストサイズな日々(2つの意味を込めて…)」

まず今回は、その名の通り「Just fit」という意味のお話。
先週末からスタートした全国5か所にあるソニーストアを巡る、カスタムイヤホン「Just ear」の全国ツアー。先週の会場である札幌を皮切りに、この土日は東京にあるソニーストア銀座でも、販売会を行いました。(初回の札幌は…出張前日になって思いましたが、最後の会場にすべき場所でした…。なぜかと言えば、まだ季節は春が明けたばかりで、とても寒かったから。一年前は最後の会場で、ちょうど暑い中に心地よい気温で、良い締めくくりが出来たのですが、今年はまさかの11度。本番の夏に備えて、最後に取っておくべきオアシス的会場でした…。企画段階で気づかず、残念…。)

札幌はソニーストアのスタイリストさんに、Just earのオーナーさんがいるのが特徴的。一回目の販売会で、ご注文いただきました。遠方であるにもかかわらず、この方がいるから、札幌は一安心。そんな気持ちでいます。
このスタイリストさんにご注文いただいたのは、1年前。ちょうど大幅な納期をいただく時期で、前回の秋の販売会ではタッチの差で、納品が間に合いませんでした。感想を聞けずにこの夏の販売会を迎えることになったため、頼まれもせず、特別にこの方の耳型をメーカーから取り寄せて、持参してみることにしました。休憩時間を見計らって、フィッティング確認させていただこうと…。
その結果、Just earとしては、いい感じのフィット感でした。もし、日によって違和感を感じても、修正をするほどのものではないことが分かりました。引き続き、この方にお任せできれば…そういう安定感を当日の接客でも思いました。若いのに、流石です。

そして、この2日間の、銀座での出来事。
まず、予約状況でいえば、さすが本家本元の「銀座」。追加した2日目も、ほぼ予約満員の状況。特別に更に増枠した来月の枠も、ほぼ満員とのこと。こちらも、札幌に引き続き、流石の一言。流石さすがの「銀座」です。
今まで、銀座では、「受注のみの販売会」で、耳型採取は受注会の前後にお客様に青山店にお越しいただくようにしていました。そのためか、銀座ではあまり根詰めた業務をしていなかったため、スタイリストさんとは少し距離を感じていたのですが、今回はグッと縮まった印象を受けました。

ストア銀座を一言でいえば「総合力」と感じました。2日間メインでJust earの販売会を担当頂いたお二人とは、アイコンタクトとジェスチャーで、「少し待ってください」、「お耳、確認しました」などのやり取りが出来ました。1分1秒を削りたい私としては、とても重要。そして、この二日間にメインの担当ではなかった方からも、「お疲れ様です!」「お客様、お呼びしましょうか?」と、お声がけいただけたこと、とてもありがたく感じました。特に、疲労困憊の時の「お疲れ様です!」と、さらっとした業務用語ではない、相手の気持ちを推し量って声をかけられる気持ち良さとその表情、特に大きなリアクションはしなかったと思いますが、骨身に沁み、癒されました。

そして2日目の最後には、エレベーター前で、5階のスタイリストさん皆さんにお見送りいただくという、手厚いお見送り。中でも、初日にミーティングの進行役をされたスタイリストさんから「一名様、7月にご予約いただきました!」という共有のご連絡、とても嬉しかったです。

メインで担当頂いた方だけではなく、5階フロア皆さんとの連携で成しえた成功。(もちろんプロジェクトリーダーの松尾さんやストア本部の方の事前準備の功績は言うまでもなく…)
全国ツアーの後半戦に繋がる良いイベントとなりました。

次回は「ジャストサイズ」というキーワードを思いついたきっかけを軸に、続きを語りたいと思います。