専務 菅野聡のブログ

Just earにおける耳型採取の重要性とイヤーフィッティングマイスターとしての菅野の役割

ニュースページやメールマガジンにてご案内の通り、この度、Just earの耳型採取費用を2023年7月18日(火)の耳型採取分より、価格を改定いたします。お客様にはご負担を強いる形となりますため、価格改定に対して少しでもご理解いただければと思い、このブログにて私が行っているJust earの耳型採取についてまとめることにしました。

Just earは耳の構造から考えれば規格外の大型ダイナミックドライバーのユニットを搭載しています。大型のユニットを搭載していても安定した装着感があり、それでいてプロダクトとして成立する美しさが必要。これを実現するために、事業開始前の2014年に耳型採取法の確立から関わらせていただいたのがJust earと当社の始まりです。

耳型採取法の確立を目指す初期段階で一般的な耳型採取の考えでは成立しないことがわかりました。「採取ができるだけで、プロダクトにはならない」。それはなぜかといえば、Just earの耳型採取は耳の形を採取しているだけではないからです。Just earの耳型採取では、担当する私が大型のユニットが適切に収まる位置を割り出した上で完成を想定して採取を実施するという、いわば設計業務の一部を担う特殊な耳型採取を行っています。規格外の大型ユニットのため、大半のお客様の耳には簡単には収めることができません。そして左右の耳の形も均一ではありません。小さな耳に大きな部品を納め、そして美しさも追及するという、相反する現実を乗り越えることが必要でした。このために追及したのが、「mm単位以下で位置の割り出しが可能な採取ゲージの完成度」と同時に、「最適な採取材料や採取器具の選定」でした。材料と器具については、探究した結果たどり着いたのが現在も使用し続けているカートリッジタイプの材料でした。日本では補聴器メーカーから耳型採取材料や器具を購入するのが一般的ですが、Just earで使用している材料は、私の知る中ではそれらの一般的な調達先では入手できない特殊な材料でした。採取材料が高くなってしまうため別の材料で何とかならないか検討したのですが、精度を落とさない限り他の材料では代用できませんでした。このため、Just earのためだけに、小ロットにて海外より取り寄せることになりました。

完成度を追及するために、一般的な耳型採取と比べて、材料の使用量は2名分、そして採取時間は3名分使用しています。耳型採取は直接の商品ではないため1万円以上にならないように設定していたのですが、2015年時点よりも約3,000円のコスト増となってしまったことから、今回は原価分のみ値上げさせていただくことにいたしました。

耳型採取の段階で設計業務の一部を担っていることから、耳型の完成度が出来上がりを大きく左右するのがJust earの特徴。1㎜以下の小型化、1度以下の傾き調整で全く別物の仕上がりになります。このことから私が耳型採取を担当し、販売させていただくJust earに対する仕事の基準はシンプルです。「自分の作品として世の中に出ても恥ずかしくないように、常に100%以上の集中力で仕事をすること」と設定しています。2015年からの8年間、私が担当させていただいた全てのお客様にこのように対応させていただいています。これからも高品質の仕事を追及してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。